3分でわかるフィボナッチ

現実的には両者は統合されて、「部分的変動金本位制」という姿となり、当然のことであるが、旧ドル債務の徳政令の狙いもあるので、新ドルと旧ドルが並行して流通する「並行通貨方式」が、同時に採用されるに違いない。
過去の債務の切り捨てはそれなりにメリットは認めうるが、皿世紀の国際通貨システムとしてアメリカが「金本位制復帰」を志向する最大のメリットは何か、という疑問が涌いてくるに違いない。 私の答えは、「比類無きドルヘの信認」の確立が可能となる、ということである。
今アメリカ経済は踊り場にいるが、処方菱はいくらでもある。 アメリカが一番恐るべきは、アメリカ人の心に巣くう慢心と慎重さを欠いた楽観主義であろう。
これさえ暴走しなければ、対応策の選択肢はそろっている。 インフレ問題も石油問題も為替問題も、余程のことがないかぎり、解決可能である。
つまり、対インフレ、対石油、対高金利といった1981年に「金委員会」で「金本位制」なら解決可能なのか、と議論されたほとんどの問題は、今のアメリカにとっては、ほとんど解決ずみといっていいのだ。 では、何がアメリカの覇権にとってリスクなのか。
今のアメリカの最大のリスクは、「ドルへの信認」を、今後長期間にわたって維持可能か、否かという問題である。 ちょうど、1985年のプラザ合意の前後数年にアメリカで議論された「サステナビリティ問題」と共通する「ドルへの信認の持続可能性」の話である。

前回は1980年代前半の意図的「強いドル」政策の矛盾による「ドルのクラッシュのリスク」であった。 今回は、アメリカは海外からの借金でヤリクリしているではないかといわれる「経常赤字4000億ドル」の矛盾による「ドルのクラッシュのリスク」の問題化である。
このテーマはいつ、何をきっかけとして表面化するのか、なかなか予測できないが、一度火がつき、後手に廻ったら食い止めるのは困難である。 これを事前に食い止めるのは、アメリカが訓年近くかけて集めた「金」を、あっちのポケット、こっちのポケットから溜めこんだ「金」を取り出し、今までは通貨として認識しないで持っていたが、これからは通貨として認識して「IMFにも早速報告する」と発表して、同時に、「部分的変動金本位制」を本日から採用すると発表すれば良いのである。
これはアメリカの一方的な意思表示だけで良い。 むしろ他国が追随しない方が、「ドルだけが金と結びつく」ので、国際金融市場に与えるインパクトは大きく、ドルだけが燦然と輝くことになるのである。
「フェーズT」でアメリカが狙っている「新金本位制」は、「部分的金本位制」に違いない。 そして、そのメリットについていろいろ述べたが、そんな17パーセントだけカバーする金本位制なんて、多くの人々が信用するだろうか、と思われるに違いない。
このような「17パーセント部分的金本位制」で、しかも、新ドルと旧ドルという「交換紙幣と不換紙幣の同時流通」という手品みたいなことは、話としてなら理解できなくはないが、現実的ではない、との感想を抱かれることだろう。 だが、歴史上の事実として「17パーセント部分的金本位制」は、紛れも無く、実在したのである。
しかも、交換紙幣と不換紙幣の「並行通貨方式」も、現実にあったのである。 驚くべきことに、ある通貨管理の目的で、「17パーセント部分的金本位制」の免換紙幣と不免換紙幣の共存政策は、当初の狙いどおりの効果を発揮したのである。
Rーニンは、部分的金本位理の実践者だったRーニンは「金」に関して、「金は公衆便所の金隠しの飾りがふさわしい」と言ったという話は良く知られている。 だが、この話には、続きがあるのだ。
この後で、「ロシア共和国にとって現在の条件で必要なことは、金を節約し商業をその手に収めることである」と、Rーニンは主張しているのである。 Rーニンたちは1917年に革命を起こしたが、革命直後の数年間は戦時共産主義期といわれ極端な物不足の下で悪性インフレが急進していた。
これに続く新経済政策(ネップ)の時代に移ると通貨改革が何度も行われたが、インフレは依然として収束しなかった。 デノミを行い新ルーブルを発行しても、貨幣価値は下がり続けた。

そこで、Rーニンは斬新的な通貨改革を試みた。 ハイパーインフレで日々価値が下落するルーブルの価値の維持をいかにすべきか悩んだ末、不換紙幣ルーブルだけが流通しているところへ、新しく免換紙幣を発行し並行流通させることにした。
1922年のことだった。 免換紙幣を発行するにしても「金」の手持ちは少ない。
そこで額面の弱パーセントだけ免換に応じる「部分的金本位制」の導入であった。 この時発行された党換紙幣の名称は「チェルボネッッ」であり、この「チェルボネッッ」はピョートル大帝時代に実在し流通していた金貨の名称であった。
またそのロシア語の意味は「安定」とのことだ。 「チェルボネッッ」は外国通貨とも部分的に交換性があり、国内の在来の不免換紙幣ルーブルとは、変動レートで交換された。
Rーニンが「チェルボネッッ紙幣」と「部分的金本位制」を取り入れて発行していたことを知ったときには、驚いた。 私が「交換紙幣と不換紙幣の並行流通」を思いついたのには、あるヒントがあった。
G氏が1981年に金約款付財務省証券の発行を提言したとき、G氏は質の異なる2種類の財務省証券、1つは金免換付財務省証券、もう1つはただの不換財務省証券で両者の並存を認めていることに気がついた。 財務省証券は国の借用書であり、突き詰めれば職略的シナリオは出来た、次は、金本位制復遍へのプロセスだときにはそのレートは6.5倍から8倍にもなったが、わずか2年ほどで強烈なインフレも収束したのである。
通貨に対する信頼がとりもどされ、インフレも落ち着きルーブルも安定し始めたのである。 意表をつくRーニンの通貨対策は、見事に初期の目的を達成した。

アメリカがこれから行うであろう「17パーセント部分的金本位制」と「交換紙幣と不換紙幣」の並行流通を、2000年ほど前に共産革命を行ったRーニンがすでに実験していたとは奇妙な巡り合わせである。 お金(紙幣)も国の借用書である。
ということは、紙幣にも交換紙幣と不換紙幣の並存が認められてもおかしくないはずだ、と思ったわけである。 アメリカの取るべき「創世紀の新金本位制」の姿は見えてきた。
あとはどう準備を進めるかである。 つまり、「金本位制復帰」へのプロセスの問題である。
アメリカ人は狩猟民族の末商であり、シミュレーション思考と戦略思考に秀でている。 「21世紀の新金本位制」のシミュレーションは、1981年の「金委員会」のときにすでに十分に検討を済ませていたはずである。
あとは対ソ連、対石油、対南アフリカ、対英国など全体の座標軸を揺るがしかねないファクターをウォッチしながら、「全体のタイムスケジュール」の微調整を繰り返してきたのである。 ということは、すでに外部に対しても、多くの働きかけが行われていたのである。
外部環境の整備は着々と進行していたのである。 私たちには全体像が見えないため、個別の出来事の因果関係が読めなかっただけなのである。
初めに、「金をめぐる9つのなぜ」から書き始めたが、まだ私なりの見方からの答えをだしていない設問も残っている。

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